私が一番好きなキャラクター、ピクシス司令
『進撃の巨人』には魅力的なキャラクターがたくさん登場します。
その中で私が一番好きなのが、駐屯兵団のドット・ピクシス司令です。
普段は飄々としていて、酒好きの変わり者。
ですが、人類が追い詰められたある場面で彼が見せた姿に、私は強く心を動かされました。
それが、トロスト区奪還作戦の前に兵士たちを鼓舞した演説です。
兵士が逃げ出そうとするほどの極限状態
当時の状況を振り返ってみます。
トロスト区は巨人の襲撃を受け、多くの兵士が命を落としていました。
生き残った兵士たちも恐怖に飲まれ、奪還作戦の前に敵前逃亡を図ろうとする者まで出ていました。
軍隊において、敵前逃亡は本来なら重い罪です。
普通の指揮官であれば、罰をちらつかせて兵士を無理やり戦わせるところでしょう。
「去る者の罪を免除する」
ところがピクシス司令は、まったく逆のことを言いました。
「ワシが命ずる。今この場から去るものの罪を免除する。」
(『進撃の巨人』諫山創/講談社)
逃げたい者は逃げていい。罪には問わない。
極限の状況で、ここまで堂々と言い切れる指揮官はそうはいません。
そのうえで彼は、こう問いかけます。
巨人の恐ろしさを知った者は去るがいい。ただし、その恐ろしさを自分の家族や愛する人にも味わわせたいのなら、と。
逃げることを許しながら、自分が逃げた先で何が起こるのかを突きつけたのです。
この言葉で、兵士たちは自分が何のために戦うのかを思い出し、持ち場に戻っていきました。
自分たちの「罪」まで打ち明けた
演説はここで終わりません。
ピクシス司令は、4年前のウォール・マリア奪還作戦の真実を語り始めます。
あの作戦は、表向きは領土を取り戻すための戦いでした。しかし実際には、壁の中で養いきれなくなった大量の失業者を壁の外に送り出す「口減らし」だったと、彼は認めます。
そして、自分を含めた人類全員にその罪があると言いました。
さらに彼は、ウォール・ローゼが破られれば、今度は口減らしでは済まないと続けます。
食料が足りなくなれば、人類は巨人ではなく、人間同士の殺し合いで滅ぶ。
だからこそ、ここで食い止めなければならない。
そして最後に、兵士たちにこう告げます。
「どうかここで、ここで死んでくれ!」
なぜこの演説は兵士の心を動かしたのか
この演説には、リーダーシップの大事な要素が詰まっていると思います。
① 逃げる自由を与えた
命令で縛るのではなく、去る自由を与えました。
そのうえで残った兵士は、自分の意思で戦うことを選んだことになります。強制された兵士と、自分で選んだ兵士では、覚悟がまったく違います。
② 都合の悪い真実を隠さなかった
口減らしの話は、指揮官としては隠しておきたい不都合な事実です。
それをあえて打ち明け、しかも自分も罪を背負う側だと認めました。だからこそ兵士たちは、彼の言葉を信じることができたのだと思います。
③ 戦う理由をはっきりさせた
ここで負ければ、家族や仲間が殺し合う未来が待っている。
「なぜ自分がここで命をかけるのか」を、兵士一人ひとりが理解できる言葉で示しました。
史実にも似た演説がある
実はこの「去る者は去れ」という鼓舞の仕方は、現実の戦史や物語の中にも見られます。
有名なのが、シェイクスピアの戯曲『ヘンリー五世』で描かれた、アジャンクールの戦い(1415年)の前の演説です。
圧倒的に不利な状況で、ヘンリー五世は「この戦いに気が乗らない者は去れ。帰りの旅費も出してやろう」と語り、残った兵士たちを「我ら少数の、幸福な少数の兄弟たち」と呼びました。
逃げる自由を与え、それでも残った者を誇り高い仲間として扱う。
人の心を動かす指揮官の言葉には、時代やフィクションを超えて共通するものがあるのかもしれません。
まとめ:腹を割って話せるリーダーに
正直に自分の腹の内を明かしたうえで、「ここで戦って死んでくれ」と言える指揮官は、そうそういるものではありません。
私はこの演説を聞いたとき、勇気が湧いてきました。
もちろん、現実の私たちが命をかけることはありません。
それでも、
- 相手に選ぶ自由を与える
- 都合の悪いことも正直に話す
- 何のためにやるのかをはっきり伝える
この3つは、職場でも、どんなチームでも活かせるはずです。
私もいつか、ピクシス司令のように皆を引っ張っていけるリーダーになれたらと思います。

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